2025/9

9/25

ロロの新作で音楽を作ることになり9月は稽古やら音楽制作で過ごしていたがついに今日初日の幕が開けた。ロロと一緒にやるのは2017年の「BGM」初演以来なのでなんと8年振り。今回の座組は裏方含めて初めての人も多く当初は緊張してたが話せば皆優しい人ばかりだし、三浦さんの戯曲も早々に上がっていたおかげか、非常にスムーズかつ笑いの多い穏やかな雰囲気が稽古場に漂い続けていた。自分は音楽担当として入ったので稽古場での定位置はスタッフ寄りの端っこの場所だったおかげもあり割と俯瞰でずっと稽古を眺めていたが個人的に今まで観たロロの舞台の中でも1番面白く感じたし共感した。稽古中はもちろん皆稽古に勤しんでいるのであまり雑談をする機会もなかったが喫煙所に行けば少しは気が抜けてロロの亀島さんなんかと「スマッシングパンプキンズが来日してるらしい」なんてたわいもないけど誰かと話したかった話をできたのもまた嬉しかった。
家と稽古場を往復し、劇中歌を作る日々だったがスケジュールに余裕があったのであまり苦戦することもなくスルスルと曲は出揃った。三浦さんと曲を作る時はいつも詞が先で、もらったものを1つずつパズルをはめていくように作る。三浦さんからLINEで歌詞が送られてきてそこに俺なりにぴったりグッと似合うメロディをひとつひとつ考えながら作る。ギター片手に歌いながらA4の紙に印刷された戯曲をパラパラとめくりまだ観ぬシーンを想像し照らし合わせる。実際に稽古でそのシーンが行われると思っていたのとはまた違うニュアンスであるのもこれまた楽しい。俳優というのは本当にすごい。文字で読んだセリフが色を持って言葉になってそこに立っているのを観るのは何度見たって感動する。そこには人間の力しかない。まだ大道具小道具が揃う前の稽古ではマイムと言ってそこに物が"あるテイ"で話を進めるわけだがそれもまた演劇を感じて面白い。そこにないハンディ扇風機を持ち台詞を放っている姿を見て風を景色を関係を想像力と言葉が埋めていく。演劇を観たことある人からしたら何をそんな当たり前のことをと言われるかもしれないがそういった想像力で彩られる光景にやっぱり感動しちゃうんだった。
昨日今回の会場である渋谷ユーロライブへ大道具小道具衣装が運ばれて通路や楽屋に広がってる様子は祭りの前という様子でワクワクした。実際の舞台上で通し稽古もあるので俳優達も皆揃っている。俳優らも小屋入りしてから心なしか纏うキラキラが増して見えた。楽屋で談笑なんかもしてたがなんとなく喫煙所以外に落ち着く場所がない。とはいえいつまでも喫煙所にいるってのもなんだから仕込み中の会場内をウロウロしていた。音響ブースにあるYAMAHAの大きなミキサーを見せてもらったり、照明の方をそっと見ればカタカタとPC上でプログラミングしているのに合わせて舞台上の照明がチカチカと明滅している下では上手と下手の袖を色んな人が行ったり来たりしている。楽屋では俳優らがメイクをしている。楽屋にいる時は皆の邪魔にならぬよう椅子に座って天井や壁を眺めていた。
そして今日ついに幕が開けた。昼に本番と全く同じ状態で1回劇を通すゲネプロを行っているのを後ろの方の席でこっそり観る。舞台上は照明や音響や美術や衣装が揃い華やかに彩られている。改めて今回三浦さんの書いた話を考えていた。
思い出というものに対して事実として覚えるようにはしているがやっぱり忘れっぽいし忘れかけた時にはやっぱり美化してしまうし。もう一生会わないかもしれないかつての友達や会わないと思っていたらふと会えた人や会おうとして会えた人、初めて会った人、これから会う約束をしている人、個人的にこの1年人生の中でも濃厚にそういう事がたくさんあって今回の「まれな人」は観ていてそんな事について色々思った。そもそもまた三浦さんと再会して何か一緒に作品を作るだなんて1年前には考えもしてなかっただろ?
誰かと関わるということは難しいような気もするし別に難しいことなんか何も無いような気もする。想ったり想われたり、もう馬鹿みたいに考え込んでしまったり、しょうもない事でゲラゲラ笑いあえたり、ひとりがいいと言ったり誰かに会いたいと泣いたり、誰かと交差することはとにかくもう抱えきれないほど双方向に感情と思いが入り乱れているが最近はそれが生きるということなんだなと思うことにして自分の中の気持ちに折り合いをつけている。まぁなんつったって会って出会って再会して話してくれる人にはありがとうという感謝の気持ちしかない。とかなんとか書いてみたがシンプルに誰かが誰かを思うっていいよね。歌だよそれは。明日からも数日渋谷での劇は続くのでとにかく元気に千秋楽まで過ごせるよう俺は健康に生きる!